彼は高校をなんとか卒業しました。
大変なのは勉強ではなく、周りの生徒との関わりでした。
関わりたいけれど、うまく関われないのです。
ですから、高校時代は毎日が不安だったらしいです。
しかし、なんとか卒業までは頑張りました。
卒業後は大学に通学を考えていましたが、不安が強くなり断念しました。
アルバイトに挑戦しました。
いくつか受けましたが、うまくいきませんでした。
最後に挑戦したのが、居酒屋の調理でした。
調理は1人で黙々と注文を作るだけなので、自分の特性にあっていたと言っていました。
調理師がベラベラ喋るよりは、無口でも手が早いほうが良いのでしょうね。
しかし、次から次へと若い人たちがアルバイトでお店に入ってきます。
調理場にも入ってきました。
それで、不安が強くなり、アルバイト先に行けなくなった彼です。
正社員として働く自信はないので、またアルバイトを探して働きましたが、やはり不安が大きくなってやめてしまいました。
それから10年間ひきこもってしまいます。
「ひきこもっています。」と言いながら、友達とカラオケに行ったり、ドライブに行っている人がいます。
それはひきこもりではないですね。
厚生省は〈社会的ひきこもり〉と言う言葉で今問題になっている〈ひきこもり〉を定義しています。
彼は、10年間家族とも一切話をしていないのです。
「そんなバカなことがありますか?」と講演会などで、質問されることが多いのです。
しかし、よくある話です。
昼夜逆転の生活。
みんなが寝静まってから、台所で朝まで過ごす。
そんな生活を10年間。
私たちはそんな彼の部屋を1年間訪問し続けました。
1ヶ月に2度訪問したのです。
しかし、何も反応がありません。
何も反応がないまま、1年間も訪問し続けることはかなり疲れてきます。
「こんなことをする時間があったら、支援に繋がった人たちに時間を使ったほうが良いのでは。」
そんなことを思う時もありました。
しかし!!
私たちの努力が実る時がきたのです。
「1年間話をし続けて、聞いてくれてありがとう。次回が最後の訪問になります。」
「家にいたら、不安が強くて、外に出られないのはわかっていますよ。だから、僕たちと一緒にでましょう。強制することは一切ないです。君が幸せになるために、全力で支援します。」
「ここにカバンを置いておくから、下着3枚とTシャツ3枚と何か自室からもって出たいものがあったら、それもカバンに入れてください。夜の10時に迎えにきます。両親には、その時間、隣町にいてもらうことにしたので、会う必要もありません。ジーパンを履いて待っていてください。」
大きな車をレンタルして、彼の家に夜の10時に着きました。
車の窓にはスモークのフィムが貼ってあります。
彼には、事前にマスクとサングラス、手袋を渡してあります。
20017年10月7日午後10時彼の部屋をノックしました。
「サポートセンターの東大です。迎えにきましたよ。」
「はい。」
扉の中から小さく声がしました。
初めて聞く彼の声でした。
明日に続きます。
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