Aさん52歳でミッキーマウスのTシャツを着るのはやめましょう。
支援しているAさんは現在52歳。
Aさんの母親と私がボランティア関係で知り合いだったことから、相談を受けて支援が始まった。
支援は自宅に訪問することから始まった。
支援をお引き受けする前に、当事者のことをよく理解しなければならない。
しかし、Aさんのご両親は子どものことを良く理解していなかった。
大学1年の夏前に大学に行けなくなり、それ以来ひきこもってしまった。
同居している家族とも会話がない。
1日中、寝ているかゲームをしているか。
ゲームは高校の時に買ったものを30年間使っている。
その程度の情報しか得ることはできなかった。
手探りでの支援を余儀なくされた。
もちろん30年ひきこもっていた人が、すぐに外部からの訪問者に会うことはまずない。
たとえ事前に母親から、訪問に関しての話を聞いていたとしても。
3回目で訪問を中断した。
夜中に大きな声で叫んだりする様になったのは、私の訪問が原因だとしか考えられなかったから。
訪問を中断した後は、必然的にAさんの支援が考えられなくなった。
突然のAさんからの電話はその半年後になる。
深夜に私の携帯にかかってきた電話。
番号は〈非通知設定〉だった。
「もしもし」という私の声を遮るかの様に「あのう、僕はまだ大丈夫ですか?」との言葉。
誰だろう?
年齢は40代から50代。
訛りがひどいわけではない。
瞬時に関わっている人のことを思い巡らせた。
「大丈夫ですよ。あなたがやる気を見せてくれたなら、僕たちはあなたが回復できるまで決して諦めませんから。」
「会えますか?」
誰だ?誰だろう?
「私は今、フィリピンなんです。明後日には飛行機のチケットが取れますが・・・。セントレア空港からあなたのご自宅まで、電車を使えばどのくらいですか?最寄り駅はどこだったでしょうか。」
「◯◯駅です。そこから徒歩で・・・」
あっ、Aさんだ。
初めて聞くAさんの声です。
こうしてAさんへの支援が始まったのです。
ひきこもり30年。
アルバイト経験なし。
家庭での会話もない。
友達も30年ない。
その時には、これほどまでに大変な支援だとはわからなかった私たちです。
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