良い表情が見られるようになってきましたね。
ASDの特性が強くて、大野は周りとのコミュニケーションがうまく取れなくなりました。
在籍していた大学院の研究室は、世界最先端の研究に取り組んでいたそうです。
世界中の研究機関との競争は、熾烈なものだったそうです。
そんなこともあり、周りの研究員とのコミュニケーショが取りにくい彼は研究から外されてしまいました。
その特性の強さから仕事にもつけないほどでした。
そして30年もの期間ひきこもるのです。
30年、働きもせずひきこもったのですから、生活保護の受給を受けられたと思います。
生活保護を受けながら、生きていくという選択肢もあったと思います。
私は、大野にそのあたりをこの7年間で何度も聞いています。
なぜなら、彼の特性を薄めることは大変なことだからです。
大変なことを今から時間をかけてやっていけるのか?
その気持ちの確認をしなければならないのです。
発達障害なのでできないことがあります。
どうぞ、ご理解ください。
そんなことを主張している人たちがいます。
それで良いと思います。
人それぞれですから。
誰からも強制されることなく、ご自分の判断でご自分の人生を決めれば良いのです。
というより、決めるのは本人でしかないですからね。
大野が私たちの支援につながってから、私たちがしてきたことの1番大切なことは、〈人生は素晴らしい〉と大野に実感してもらうことです。
初期のプログラムの大半はそれでした。
そして私たちは、あえて聞いたのです。
「発達障害を理由にして、努力しなくても良いし、変えられるところは積極的に変えていき、変えられないものはそのままを受け止める努力をするのも良い。どちらを選びますか?」と。
大野の答えはもちろん、「やりたいです。」
支援している青年たち全てにそのような段階を踏んでいきます。
「青木さん、生きていて良かったと思えたんです。」
そんなことを熱く私に話してくれた青年がいましたね。
彼、支援終了から13年たちましたが、あれから1日も休まず働いていますよ。
お母さんから、1年に1度、私の元に報告があるのです。
「人生は素晴らしいです。それを体験するために努力が必要なら、躊躇せず突き進んで行きたい。」
ああああ、大野は本当に変わりたいんだ。
そう思えた昨晩でした。
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