「バード君」は当初非常に混乱していた。
自分が女性になりたいことに。
それは日本ではまだまだ世間から受け入れられることではないことも知っていたので。
サポートセンターは発達障害の2次障害で「引きこもり」や「家庭内暴力」で困っている当事者を支援する団体です。
しかし、支援する当事者は様々な問題を1人で抱え込み孤立していることがほとんどです。
「小児性愛」「ストーカー」「アルコール依存症」全てのことをお伝えすることはできないのですが、「まさか」「そんな」と感じてしまう状況の人もみえます。
僕にはそこまで大変な状況の人の支援は任せられていませんでした。
ですから「女性になりたい」という状況だけでも驚いてしまったのです。
そんな彼でしたが、スタッフにも青木にも心を打ち解けることは中々できませんでした。
自宅からサポートセンターの事務所まで毎日遅れずに通ってくるのですが、いつも個室内で与えられたプログラムを淡々とこなす程度でした。
スタッフからの問いかけにも何も答えずに時間が来たらタイムカードを押して、急いで自宅に帰る日日でした。
3ヶ月が過ぎた頃、青木が「バード君」に話しかけました。
「フィリピンと言う国は、日本と違って LGBTの人たちが市民権を持っている国です。」
「例えば君が女性用の下着を身に付けたいと思って、女性下着のコーナーで選んで試着しても誰からも変に見られないのがフィリピンと言う国です。」
バード君は青木の話を目を輝かせながら聞いていたそうです。
そして、青木にこう尋ねました。
「いつからフィリピンに連れて行ってもらえますか」と。
フィリピンに行くまでの1ヶ月間、彼は大きく変わりました。
多くの人と話すようになったのです。
また、勉強がしたいと中学の教科書を持って来て、スタッフに教えてもらうようにもなりました。
それは真っ暗闇の世界から、突然一条の光の筋が天から差し込んだような光景を僕は想像しました。
小、中不登校。
友だちは1人もおらず。
いつも1人でいた「バード君」が大きく変わり始めたのです。
しかし、僕自身はフィリピンに彼を連れて行くのは反対でした。
僕自身、彼は倒錯しているだけなんだと思っていました。
それがそんな世界に連れて行き、彼を自由にさせてしまうと、後戻りできなくなってしまうのではないか。
むしろ違う環境に置き続ける方が正解なのではと青木のやり方を支持できませんでした。
しかし、青木の支持に従うしかありませんでした。
明日はフィリピンで様々な問題を引き起こしてしまう「バード君」のお話を書きます。
明日もよろしくお願いします。
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