青木さんが迎えにきたのは夜の10時だった。
紙に「夜の10時だったら近所の人に会うことはまずないから安心しなさい。」と書いてくれて、前日に僕の部屋にその紙を入れてくれた。
それと「部屋を出るときに必要だったら使ってください。未使用です。」と紙に書いてあって、袋にサングラスと、マスクと、手袋、帽子が入れてあった。
今考えたら、本当に僕のことを考えてくれていたなと感心します。
サポートセンターの事務所に着いたら、スタッフが出迎えてくれた。
僕の荷物を持ってくれて、部屋まで案内してくれた。
部屋は1人部屋、布団もタオルも新品です。
そしてお風呂の使い方を教えてくれた。
明日の朝食は何時が良いかと聞かれたので、答えられずにいた。
「みんなは何時に食べますか」と聞いたら「7時ですよ。」との返事でした。
「僕もみんなと一緒でいいです。」と答えた。
風呂には入らずにそのまま寝てしまった。
朝食はスクランブルエッグとパンケーキとイチゴ味のヨーグルト。
テーブルに胡椒と塩の瓶とはちみつが置いてあった。
飲み物はコーラとコーヒー。
完璧に僕の朝ごはんだ。
朝ごはんの支度をしてくれている最中に、マンションから外に出て散歩がしたくなった。
「大丈夫ですか」とスタッフが聞いてくれた。
「僕の家から車で1時間もかかるところだから知っている人はいないから大丈夫です。」と答えた。
怖いというより、自由になったんだと自分で確認したかった。
マンションにはあまり人が住んでいる気配はなかった。
マンションから外に出た。
色々な音が僕の耳の中に入ってきた。
味噌汁の匂いも。
近くをうろうろしていたら、大通りに出てしまった。
そこにはたくさんのサラリーマンの行列が会社に向かって行進していた。
名古屋駅から伏見まで途切れることのライン。
それを見た僕の顔が引きつった。
顔が変形した。
体がフリーズした。
早く安全な場所に移動しないとと思ったけれど、手足が動かない。
道路にしゃがみこんでしまった。
姿勢を保つことができなくなって、道路に倒れ込んだ。
「山田さん、大丈夫だよ。さあ、帰るよ。」そう言ってスタッフがぼくを抱き起こしてくれた。
ぼくの後をつけていたんだ。
手足がバラバラになってしまって、歩くことができない。
上下の歯がガシ、ガシと勝手に動く。
スタッフが電話をするけれど、相手は出ない。
「5分ここで待っていてください。」とスタッフが言って、走り出した。
5分とかからずにスタッフが戻ってきた。
台車を押しながら。
「ここに乗ってください。私が押していきますから」
ぼくは台車に乗せられて、部屋まで戻って行った。
悲しかった。
涙が溢れて仕方がない。
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