「ただいま当機は、離陸許可書を待っております。
今しばらくお待ちください。」
と、青木さんの携帯から飛行機の機内アナウンスが聞こえた。
「青木さん、そちらは雨降っていますか?」
「降っているね。」
「じゃあ、1時間は遅れますね。」
「もっと突っ込んで話し合いましょうよ。」
断っておくが、途中から「ヒロさん、英語での会話にしよう」とツルピカから提案があった。
ここで、ツルピカの英語を再現することは避けたい。
誰だってプライドというものがあり、それを尊重したいのです。
ですから、おいらの下手くそ日本語訳で俺たちの会話を再現します。
「うーん。」と俺は唸った。
「今でしょ。今。」
「鉄は熱いうちに打て。」
「だから、今〈50代男さん〉と面と向かって話す必要があるんじゃないですか?」
「時間が経てばたつほど、諦める作業に入ってしまい、もう再び上昇するということができなくなるんでしょ。」
「俺でよければ彼と話しますよ。」
「まあ、スタッフがいいんでしょうがね」
『もういいです。』というのは、〈50代男さん〉の本心かな ?
「違いますね。不安が強くて怖気付いたんですよ。」
「みんなそうじゃないですか。」
「では、どのように話しかければいいのかな?」
「あのですね、もしかして、不安なのではないですか?」
「英語を一生懸命やったけど、何年やっても話せないと思っていませんか?」
「フィリピンも結局日本と同じで、誰とも関わりがもてない。とか。」
「そうしたら、次はそれとは違う理由を話しますね。」
「やらなくても良い理由を話します。」
「病気とか、家族の面倒をみないといけないとか、年だからとか。」
「で、その話題にはお付き合いしないでいいですね。」
「そう、付き合ってもらったら、もらったで〈50代男さん〉も困ってしまうよね。」
「で、しばし沈黙ですか。」
「そうだな、沈黙するな。」
「結局思うんですけれど、『背中を押してもらいたい。』じゃないですか。」
「そうだろうな。」
「『僕、大丈夫ですかね。』の再確認ですよね。」
「僕もそう思うな。」
「30年ですからね。」
「俺が生まれる前からひきこもり。」
「家族以外とは誰とも会ってもいない。」
「信じられないですよ。30年間部屋に閉じこもっていたなんて。」
「はあ〜。」
「なんで?」
「どうして?の世界ですよね。」
「ため息ついても意味がないので、これでいいですよね。」
「うーん。」
「あんまり長く待たせると、余計不安になりますよ。」
「あれを言った方が良いかな。ヒロさんどう思う?」
「あなたが諦めない限り、僕たちは24時間365日、あなたが自立できるまでより添い続けます。」って言った方が良いだろうな。
「それは、僕が言っても説得力ないですよ。」
「そうだな。」
「青木さんが日本に帰ってきてからにしましょう。」
「それまでに前向きになってくれれば良いのですが。」
「青木さんと話がしたいといいだされるとは思います。」
「フライトは2時間ですよね。」
「機内アナウンスは間も無く離陸と言っていますね。」
「では今から3時間後なら繋がると思いますと言っておきます。」
そう言って俺は電話を切った。
最近のインターネット通信は素晴らしいな。
すぐ近くで話しているように聞こえるから。
さて、決戦の時は来た。
いつものお願いいたします。
それでは隣室に行ってまいります。
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