高校受験に向けて必死な俺。人生をやり直したい一心だった。
50代男さんをなんとかしなければいけない。
スタッフはそう思っていた。
しかし、それにしても支援の難しさに、思わず足がすくむ。
と言ったところだろうか。
こんな時は、あの男を待つしかないんだ。
支援30年。
たくさんの人たちを支えてきたあの男。
支援の為にこの世に生を受けた男。
彼ならこの難局を打開してくれるだろう。
多くのスタッフが、彼を待った。
もちろん彼にしたって、50代男さん自身が回復を諦めてしまったことは知っていたし、毎日のようにスカイプで日本サイドと話し合っていた。
そんな彼がひさしぶりに日本に帰国し、
セントレア空港から名古屋の地に降りたった早々に、スタッフ会議を招集して、50代男さんへの支援の方向性を考えたんだ。
会議が終わったら、すぐに50代男さんへの訪問となった。
僕がお供をすることとなった。
事前のアポなし。
もちろん、突撃訪問。
玄関先で草むしりをしていた50代男さんのお父さん。
青木さんは会釈して、しゃがんで一緒に草むしりをし始めた。
お父さんと何か話ながら草を抜いていく青木さん。
なんどもお父さんに「私がすることですから、結構ですよ。」と言われている感じがした。
手を止めて、お父さんが自宅に入っていく。
2、3分たってから、出てきたお父さん。
お父さんが、首を横に振っている。
「『会いたくない』って言っているみたいだ。」
青木さんが車に戻ってきた。
そして、無言のまま車を出した。
「ヒロさん、夕飯にしようか。」と青木さん。
「???」
「僕、昼食まだなんですが。4時ですよ。」と僕。
「いつものコーヒービーンでいいよな。」と青木さん。
「青木さん、ここは日本です。日本にコーヒービーンはありませんよ。」と僕。
「あっ、喫茶店があった。」と言うと素早く駐車場に入った。
しかし、車から降りない青木さん。
運転席でフリーズしている。
こんな時はしばらく放置するしかないんだ。
よくあるパターン。
5分経過。
10分経過。
さすがに心配になって、僕は駐車場に戻ってみた。
車がない。
青木さんもいない。
「はあ? なんなんだっ!!」
「本当におかしな人だ。勘弁してくれよ。」と俺。
「もしもし、青木さんどこにいるんですか。」
「もう一度、50代男さんを訪問するわ。」
「昼食、先に食べていて。サラダが冷えると美味しくないから。」
「サラダが冷えると美味しくない?」
「????」
「それはコーヒーのことだろう。」と僕。
30分後、青木さんが喫茶店に帰ってきた。
「50代男さんと話して、もう一度やり直すことに同意したよ。」
「えええええ。それで?」
「明後日のフィリピン行きの便をスタッフに頼んで手配してもらったよ。」
「明後日ですか?そんな急な話。大丈夫ですか?」
「問題ないね。」
で一件落着。
僕たちは<冷めきったサラダ>を食べ?、会計を済ませて店外に出た。
「あれえ、車がないや。」
「どこに置いてきたかな。あれれれ?」と青木さん。
「あっ!! 50代男さんの家の前に置いたままだった。」
「青木さん、大丈夫ですか?」
「嬉しくてさ、なんか嬉しくて。ヒロさんに早く伝えようと思ったんだ。」
「あ、サポートセンターですか、ヒロと言います。実は知り合いのもうすぐ60近いおっさんなんですが、発達障害とボケが最近出てきまして、なんとか支援してもらえないですか。」って電話したくなった俺がいた。
また明日。
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