彼は10年間ひきこもった人です。
1年半、彼の自宅に訪問し続けた私たち。
30年間の支援経験がある私たちでも、ご本人からの訪問の依頼などは一度もありませんでした。
依頼がないのに訪問することは、私たちにとって、とても重荷になります。
それ以上に訪問される人たちは、不安や怒りに満ち溢れていることは、元当事者だった私たちが1番よく知っています。
そんな雰囲気を少しでも和ませるために、私たちはいつもとびきりのお土産を持参するのです。
多くはデパ地下のスィーツです。
彼らが喜ぶものはなんだろうといつもあれこれ悩んで買い物している私たちです。
その後、私たちの支援に繋がった彼らに聞くと、ほとんどの人が訪問時のお土産のスィーツを待ちわびていたそうです。
1年半の訪問で彼の声を聞いたのは2度だけです。
1番最初に訪問した時のことです。
「あなたから、依頼がないのに勝手に部屋の前まで来てしまってごめんなさい。訪問が嫌なら、合図をください。声を出すのが嫌なら、ドンドンと床を踏みならしても良いです。」と話し終えたら「わかりました。」と彼がそう言ったのです。
「えっ?今なんか言いましたか?」
「・・・・・・」
その次に彼の声を聞いたのはそれから1年半後でした。
「あなたが幸せになれるように僕たちはどんなことでもします。でも、あなたは私たちを必要としていないみたいです。それで、次回で訪問を終了します。もし、私たちを信用してくださるなら、ここにバッグを置いておきますので、パンツ3枚、下着のシャツ3枚、替えのジーパン1本を入れてください。他に家から持ち出したいものがあったら、それも持ってここから出ましょう。ここに居続ける理由は何もないです。」
そして訪問最後の日、私は彼の部屋をノックしました。
「サポートセンターの東大です。お迎えに来ました。外からは中が見えないようにした、トヨタのハイエースを借りてきました。私と青木と50代の女性スタッフできました。」
「ご家族の方には、自宅から車で30分かかる程度の場所まで離れてもらっています。部屋から出てもご家族は誰もいません。」
「お部屋に入ってもよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
1年半ぶりに聞いた彼の言葉です。
私は緊張から足がすくんで、動けなくなりました。
それを見た青木が私の背中を強く押しました。
室内は真っ暗でした。
壁に手をやり室内燈のスイッチを探します。
しかし、スイッチを入れても電球が全て切れていました。
部屋の扉を全開にして、室内に光が差し込むようにしました。
驚きました。
何に驚いたかは、あえて書きません。
彼は擦り切れた布団の上に座っていました。
「さあ、ここから出るよ。」と私の背中越しに青木が声をかけたのです。
立ち上がろうとして、よろめいた彼です。
なんとこの時、体重が110キロ近くになっていました。
現在は73キロです。
私たちの1年半に及ぶ毎月2回の訪問がこの時終了しました。
その後私たちの支援を受けた彼は、自信と生活・社会スキルを獲得し、今フィリピンの大学1年生です。
大学内に日本人は彼1人です。
そんな環境の中、1日も休まずに通っているのです。
今年の6月からは私たちのスタッフとなります。
今も日本では、私たちのスタッフがひきこもっておられる人たちのところへ訪問の為東奔西走しています。
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