Good bye Japan Hello Philippine
「僕はまだやり直せますか」と50代男さん(仮名さん)がサポートセンターのスタッフに電話をして聞いたのは4年前。
その彼がついに、決断をした。
もう一度人生をやり直すと言う決断をしたんだ。
すでに50代になっているのにも関わらずだ。
どうするのか?
どうしたいのか?
支援を担当しているスタッフとの話し合いが続いている。
「もう、50代ですから無理せずに、ゆっくりと時間にゆだねて生きていきませんか」とスタッフ。
「・・・・・・」
「大学に行きたいとのことですが、卒業したら60近いし、何のために大学に行くのですか」
「就職だって、もう何もできないでしょう。」
「ご両親もひきこもっていたあなたを受け入れてくれています。何も不自由ではないでしょう。」
50代男さんが小さな声でなんか呟いた。
「なんていったんですか」とスタッフが聞き直した。
「うるさい、黙れ。」
右手をグーにしてテーブルを叩いた50代男さん。
「黙るんだ。俺はこれから他人の三倍速の速さで生きてやる。」と言ったんだ。
スタッフだっていじわるして、あんなふうに話しかけたんじゃないんだ。
スタッフからあんなふうに言われて、考え込む程度じゃあ、これからの長い旅路を行くことはできないんだ。
50代男さんと青木さんの話し合いがおこなわれた。
1時間後、話終えた青木さんに俺は聞いたんだ。
「どうでしたか」ってね。
「愉快、愉快」と青木さん。
答えになってない。
その日の夜のミーテイング。
「50代男さんは、やれるだけやってみたい。やらなかった後悔だけはしたくない。」と話した。
「自分が誰かの役に立ちたい。」
「結婚して子どもが欲しい。」
「子どもと奥さんに囲まれた生活をしたい。」
「子どものために働いて稼いだお金で何かを買ってやりたい。」
多くの夢を語った、50代男さん。
さて、さて、さて。
「みんなで、彼の夢が叶うように応援をしていこう。」と最後に締めくくった青木さん。
来月、ご両親とお会いして、今後のことに関して打ち合わせがおこなわれる。
そして、早ければこの秋に、彼はこの日本を後にする。
すごい決断だ。
僕はそのすごさにただ、言葉を失っている。
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