小学校5年の時に、テレビで柔道を題材にしたドラマが子ども達に大人気だった。
その影響で全国の道場は、子ども達で溢れかえった。
僕のクラスも、男子が全員柔道教室に通っていた。
僕が入部した時には、ドラマはとっくに終わっていた。
何をやるにもワンテンポ遅れてしまうのが僕だ。
一人、二人とやめていく同級生を横目に、通っていた。
しかし、僕は運動音痴なので、いつも怒られてばかりだった。
子ども達に人気なのは、背負い投げや、一本背負い、ともえ投げなど。
両手、両足を瞬時に動かす事が要求される柔道は、最も苦手なスポーツだったという事を、入部してから気づいた。
ある時、川島先生が、クラスの男子に聞いた。
「まだ、柔道を続けている人いますか?」
手を挙げたのは、僕ひとりだった。
先生は僕を褒めてくれた。
でも、僕は川島先生に技ができない事を相談した。
「両手、両足を使って技をかけると訳が分からなくなってしまう。」
先生とやってみたら、先生が笑ってしまった。
その後、先生は僕と取り組みをしてくれ指導してくれた。
「ミスター青木は、小内刈りだけやりなさい。他の技はしなくてよい。」
「小内刈りだけ練習して、試合で使いなさい。」
「相手が技をかけてきた時、バランスをくずすのでその時、小内刈りを使いなさい。」
それから、柔道教室では小内刈りだけ練習した。
当然、柔道教室の先生からは、無視された。
組む相手も与えられず、壁に向かって、ひたすら小内刈りを練習した。
試合当日、大技を繰り出す相手の一瞬をついて、小内刈りを仕掛けた。
面白いように決まり、僕は市内小学校5年の部で優勝した。
その後、中学2年まで連続優勝してしまった。
ちなみに、中学2年時の準優勝者はその後国体に出ていたのを知っている。
川島先生のアドバイスで、大きな自信をつけさせてもらった。
しかし、川島先生、正直に言います。
我慢強く通っていたのではないのです。
皆がやめてしまい、僕一人になってたので、怖くて「やめたい。」と言い出せなかっただけなんです。
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