僕は小学校から学校に行けなかった。
中学も、高校も行けなかった。
そして完全にひきこもってしまった。
ひどい時には自分の部屋からも出られなくなっていた。
雨戸を閉め切り、自分が出す音が外に漏れていないか?そんなことを気にしていた。
玄関に誰かが来たら、怖くて体が震えていた。
自分はこの世界から落ちこぼれた人間だ!!
小学校から行けなかった僕が、どうしてこの先社会に戻っていけるのか?
働く? そんなことできるわけがない!!
長いこと変えられていない擦り切れたベッドシーツ。
飲み終えたペットボトルなどのゴミ。
溜まりに溜まった埃。
僕はそんなものに囲まれて生活していた。
何か物が欲しい時には、部屋の扉の下から廊下にメモを出していた。
母親が何か語りかけようものなら、ドアを足で蹴って威嚇していた。
会話なんかしたくなかった。
むしゃくしゃしてどうしようもない時は、部屋の壁を蹴った。
10年近く蹴り続けたので、あちらこちらに大きな穴が空いた。
壁に空いた多くの穴を見つめて、また落ち込む。
死ぬしかないと思っていた。
希望なんか何もなかった。
時間が経つにつれて、死んでしまいたいという気持ちが大きくなっていった。
「誰も君のことを知らない場所だったら、やり直せるんじゃないかな。」
訪問してくれた青木さんにそう言われてもすぐには理解できなかった。
手元にあるパンフレットには、ぎこちなく笑っている元ひきこもりらしき人の写真。
その時に僕の目に止まったのは・・・。
支援している元ひきこもりの青年の横で微笑んでいるフィリピン女性だった。
とてもタイプだった。
希望を失っていた僕でも年相応の性欲は残っていた。
この女性はどんな声をしているのだろうか?
こんな女性を彼女にするにはどうすれば良いのか?
自分が置かれている状況をまったく無視して、そんなことを想像したりした。
僕にとっては、初めてかもしれない気持ち。
人と関わりたいという思いが芽生えた。
この女性は僕のこの状況を知らないし、支援スタッフだから僕のことを蔑んだりはしないだろう。
そんなことを考えたら、青木さんの言葉を思い出した。
「自分のことを誰も知らない場所なら、やり直せるんじゃないのかな? 僕は人の目が怖くて家から出られなくなった。初めてアメリカにつれていってもらった時に、今まで感じたことのない安心を感じたんだ。ここならやり直せる。そう思った。」
青木さんが言ってくれたことを自分の声で話した。
紙に書いた。
何度も何度も声に出した。
ああああ、きっと自分のことを知らない場所ならやり直せる。
学校にもちゃんと行き直したい。
就職もしてみたい。
友達とバカな話で盛り上がってみたい。
なんといっても綺麗な彼女が欲しい!!
そして僕は家を出た。
日本を離れた。
自分のことを誰も知らない世界でやり直すことを決断した。
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