私は30年間、誰とも話をしていません。
正確に言いますと、「風呂沸いたよ。」と母親が言えば「はい。」とは言っていました。
いつからか「おお」になり、やがて手をあげるだけで何も返事をしなくなりました。
その程度です。
ひきこもってからは、「誰かと話をしているような会話を聞くことが時々あった。」と青木さんが母親から聞いたと言っていました。
まあ、私はできないことがいっぱいあるんですよ。
10代でしたらいいのかもしれませんが、私は50代ですからね。
まあ、あのまま社会に出たとしたら、周りから変に思われていたでしょうね。
社会に出ることなんて怖くてできないけれど。
「だから練習をしましょう。」と青木さんから言われたけれど、正直やる気なんてなかったです。
言われるままに適当にやっていました。
「その時のことを思い出して、書いてください。」と青木さんからよく言われました。
「あん時は何も希望なんかないから何もしたくなかった。」
「でも希望を感じたから、30年ぶりに家から外に出たんですよね。」と青木さんが言いました。
「あんたの話を聞いて何となく、外に出ようと思ったけど・・・」
「まあ、何もないわね。やっぱり死ぬまで、家にひきこもるしかないんだわ。」
「でも、やる気を出して毎日今は頑張っていますよね。」と青木さんが優しく言いました。
「で、なんでこんなに受験勉強の様に毎日頑張れるんですか?その理由を教えてください。」
「フイリピンに行って、こんな私でも、好きになってくれる人がいたから、頑張ってもっと良い自分に変わりたいと思った。」
「日本ではあなたを好きになってくれる人はいませんでしたか?」
「高校の時、いじめられていたんですよ。お金もってこいとか、殴られたりしていて、とても嫌だった。私は動作が遅いし、みんなとうまく会話ができなかったから、いじめられたと今ならわかる。」
「こんな自分でも変われると青木さんが言ったのと、結婚がしたいので、今最後のチャンスだと思って頑張っています。」
「女性から好きと言われたのは、その時はloveと感じていたけれど、今考え直すとそれはlikeだったよね。」
「女性の話というより、男友達ができたんですよ。みんなから飲みに誘われたり、ドライブにも行ったり、海にも行ったな。」
「僕はそれだけで、生きてきてよかったと思った。」
「だからもう一度、あの場所(フィリピン)に帰りたい。」
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