喫茶店でのアルバイトをなんとか成功させようとスタッフさんたちは強く思っていたみたいなんや。
とにかくスタッフさんの意気込みはうち以上やった。
事前に喫茶店のアルバイト風景を作り出して練習するなんて常識では考えられんよ。
名古屋市郊外にある倉庫にはテーブルと椅子そしてピッチャーやコーヒーマシンまで揃えられていた。
支援が終わったスタッフたちが呼び集められてお客さんとなって練習開始。
事前に喫茶店で何をするのかということをスタッフたちとは話し合っていたんよ。
それで大体のことは頭に入っていた。
カラン、カランとよくドアに取り付けられている音まで用意してあった。
「いらっしゃいませ。お客様2名ですか。お好きなテーブルへどうぞ」
「声が小さい!!相手の顔から目をそらさない。笑顔はどうした。」
総監督の青木さんから厳しいヤジが飛ぶ。
「第一印象が大切なんだ。」
「嫌な気持ちにさせたらもうそのお客さんこなくなるぞ。」
「もう一度繰り返しなさい。」
「いらっしゃいませ!!」目一杯の笑顔で応対してやった。
「そんな大サービス入らないぞ。」
「逆にお客さんが引くやろが。」
「はい、もう一度!!」
「もうちよっと優しくいえんのかな」と心の中で小さく叫んだった。
「メニューをどうぞ。」
「A定食とB定食、食後にアイスコーヒーとホットで」
「ご注文を繰り返します。・・・」
カラン、コロン。
「注文とっている時にお客さんが入ってきたら、そちらに目をやるんだ。」
「そして『いらっしゃいませ。空いているお席にどうぞ』だ。」
そしてすぐに『ご注文を繰り返します。』だ。
大変だ。
もうパニックになってしまった。
こんなの無理に決まっている。
僕はすっかりやる気をなくしてしまった。
やっぱり程度の悪い発達障害者はこんな難しいことをしてはいけないんだよ。
単純作業で満足してなきゃダメなんだよ。
そういう考えが頭を支配した。
「さあやるよ。やらないといつまでたってもダメな僕って思うでしょ」
僕の心の中は見透かされていた。
「ちよっと休憩。」
鬼の青木さんがそう言ったら、スタッフが冷蔵庫からケーキを取り出してくれた。
そのケーキを見て笑ってしまった。
アルバイト先のメニューにあるケーキだ。
わざわざ買ってきたスタッフに驚きと優しさとこだわりを感じたんだ。
ここまでしてくれるスタッフたち。
すべて僕のため。
「やらんでどうするんだ大統領さんよ。」
ヒロさんの声がした。
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