どっかのビルの地下が会場だった。
時間は夜の9時始まり。
沖縄ではこの時間が普通らしい。
俺の話を聞きに来てくれる人は不良少年少女、その保護者と支援者の人。
早めに俺とサポートセンター名古屋のスタッフが会場で待っていた。
始まるまでの時間がやたら長く感じたし喉が渇いたのを覚えている。
10分前になってちらほら人が来始めた。
入り口付近で誰かがもめている。
「うるせえ!!」と怒鳴る声がした。
嫌がる不良の子供を無理やり連れてきたんだろ。
「はあー」と俺は溜息をついた。
俺の話なんか役に立たない。
そう何度も青木さんには言ってきたんだ。
「大丈夫、役に立たないならわざわざ沖縄まで連れてこない」
「信じていればいい」とかっこよく話した。
9時15分に話は始まった。
地元のボランテイア団体のおばさんが挨拶した。
俺はトイレに行きたくて仕方がなかったので、行った。
「長い方?」とスタッフが聞いてきた。
そうだったけれど「はい」なんて言えるか!!
バカか。
さっき会場を見回したら中坊のくせに眉毛がないやつとかサングラスをして特攻服で着飾って来たお兄さんとかまあ正直ビビった。
お腹が痛くなったんだ。
会場からなんか飛んでくるだろうな。
そう思ったらトイレに駆け込んだんだ。
「始まるよ、うん◯こしてるの」
俺はその時そう聞いてきた女性スタッフに殺意を抱いた。
こう見えても俺は恥ずかしがり屋なんだ。
「あっちいけえ」というのが精一杯だった。
俺が会場に戻ったら青木さんが話をつないでくれていた。
周りを見渡したら会場はいっぱいになっていた。
30人近くはいたかな。
みんなが俺の話を待っていてくれたのかと思うとなぜか涙が出てしまった。
普通に話し終えられたと言いたいところだけれどダメだった。
途中で俺と母親が男に暴力を振るわれていた時のことを話し始めたら、練習の時は何も感じなかったけれど、本番では急に昔の事がありありと思い出されて体が震えて絶叫してしまった。
「てめえ、ぶっ殺す。絶対お前だけは許さない!!」
そう叫んでしまった。
絶叫したら妙に落ち着いた。
原稿に戻らなくて心に思い浮かぶことを話し始めた。
「俺はひとりぼっちだったけれど、たくさんの人が俺や母親を支えてくれていることに気づいたからその人たちの気持ちを裏切らないように頑張りたい。」
そんな風にまとめた。
視線を原稿からあげて会場を見渡したら特攻服のヤンキー兄ちゃんがじーっとこちらを見ている。
またたくさんの母親たちが泣いていた。
それを見た俺はまた泣いてしまった。
青木さんが「トイレに行っておいで」と言った。
思い出した。
この時バカヒロも一緒だったんだ。
青木さんが泣いている俺に気を使って「トイレに行っておいで」と言ってくれたのをバカヒロはこう言ったんだ。
「またうん◯か、一度で済ませておけよな」
さすが、程度の悪いアスペルガーヒロですよ。
話し終えて特攻服のお兄さんが俺の元に来てくれた。
俺は殴られると思ったから身構えた。
「ありがとな。俺とお前は同じだ。俺は今真面目に修理工として働いている」
「母ちゃん大切にな」と言い残して帰って行った。
そのあとでも眉毛なし中坊の母親が来て「息子は何かを感じてくれたと思います」と感想を話しに来てくれた。
ほとんどすべての人が「よかった。」「感動した」と感想を述べに僕のところまで来てくれた。
今から何年前だろうと思い出す。
ずいぶん昔のことのように思える。
でもこの日の出来事は自分にはとても大きかった。
恥ずかしいと思っていた過去が誰かの役に立つということがわかった日。
もちろん今になってこのように文章にかけるんだけれどね。
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