いらない服がありましたら、僕たちのところへください ヒロ
Oさんとよく話をするんよ。
と言っても「スカイプ」というインターネットを通してお互いの映像を見ながら会話できる方法でなんやけどね。
「大統領、面白かったよ。」
「何がです?」
「相席お願いします」って言われて「無理です」といってしまいそうで怖い。
「なんか、リアルに想像してしまった。」
「そうですか・・・・・・」
「思い出してはしばらく笑ってたよ。」
「そうですか・・・・・・」
「もーし、もーし、大統領居ますか?」
なんか場が持てなくなって、わざと映像を消したんよ。
会話が続かない。
これが僕の今の問題点なんよね。
まあ、喜んでもらえたならそれでよしとしましょうか。
ところで、この日は、スカイプで映し出されるOさんの画像を見て驚いた。
そこには別人のOさんがいた。
髪の毛を思い切って切ったOさんが居た。
とても、よく似合っていた。
「今まで雑木林のような頭だったのが、今風のジャニーズ系になったから、思わず僕は椅子からずり落ちそうなくらい驚いたんよ」
しばらく言葉が出なかった。
だって、やっぱり、誰でも以前のOさん見たら「なんか変」って思ったと思うから。
それほど、以前のOさん見た目に「変やった」。
だから、大変身したOさんから僕はしばらく目を離せなかった。
言葉が出なかった。
この違い。
なんなんだ。
目の前にいるのは10年間ひきこもっていた男。
部屋から出ることさえ怖くなり、深夜家族が寝静まった後に食卓で一人ご飯を食べていた男。
深夜に、自転車で隣町のコンビニに行くのが唯一の息抜き。
「大統領さ、10年も家に引きこもっていると精神的におかしくなったよ」
「居間で、家族が笑っている声がしてさ、俺のことをみんなでバカにしている。許せない、全員殺してやる。」そんなことも考えていたんだよ。」
「今考えてみたら、家族でお笑い番組見て笑っていただけなんだけどね。自分は笑うことさえ忘れてしまっていたのに、俺の悲しみや苦しみもわからず能天気に笑っている家族の存在をその時、許せなかったんだ」
そう言うと、Oさんは泣いた。
「俺、後少しで本当に自殺するつもりだった。だってな、何も希望なんてなかったし、みんな、楽しそうにしているのに俺だけ一人だったし、もうだめだ、もう無理だって」
「ともだち、一人もおらんかった。一人でいいから友達欲しかった。高校生活の思い出なんて、何もないもう一度やり直したい」
「なんで、こんな風になったんや、どうしてや!!」
そう言うとOさんは机の上にある何かを床に叩きつけた。
立ち上がって座っていた椅子を足で思いっきり蹴った。
「ぎゃあ、」という言葉にならない音を発した。
「消さなきゃ」と僕は心の中でつぶやいて、ラップトップの蓋を閉じ、部屋を出た。
歩いた。
どこまでもあてもなくまっすぐに歩き続けた。
途中信号待ちで止まった時に、信号のポールにキックを一度。
もう一度、キックをお見舞いした。
「くそったれ、くだばれ」の言葉とともに。
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