一人暮らしの練習をさせてもらったおかげで、なんとか生き延びています。
「気合いだ!! 気合いだ!! 気合いだ!!」と大きな声でその場の雰囲気を変えてしまう元プロレスラーの人がいます。
僕も彼を真似して言います。
「経験だ!!経験だ!!経験だ!!」って。
50代男さんに「500ペソを小さくしてください。タクシー代に必要なのです。100ペソと20ペソを混ぜて交換してください。」とお願いしました。
彼が僕に交換したお金をさしだします。
100ペソが2枚と50ペソが6枚ありました。
「50代男さん、僕はあなたにになんとお願いしましたか?」
「・・・・・・」
「怒ってないですよ。なんて言いましたかね。」とニコッとしながら聞きました。
「・・・・・・」
フリーズしているのです。
「今度は100ペソを渡します。全て20ペソにしてください。」
50代男さんが僕にお金を手渡します。
20ペソ紙幣が5枚。
「ありがとう。」とにっこりして言います。
夕食を終えました。
50代男さんの目を見てメッセージを送ります。
もちろん理解されません。
「50代男さん、みなさん食べ終わりましたね。」と一緒に夕食を共にした人たちの顔を見渡しました。
「あっ」という顔をした50代男さん。
「お会計をお願いします。」と、英語で従業員に頼みます。
しかし、給料後の金曜日の夕食時、忙しく店内を走り回る従業員にはその声は届きません。
しかし、僕たちスタッフは黙っています。
間を置いて、もう一度50代男さんが従業員に言います。
今度は5割増しの声量で。
従業員が気づきます。
「ハイ。」
肩をなでおろす50代男さん。
「やっぱり声が小さいのか。僕の英語が通じないわけではないんだな。」
「そうです。あなたの声は小さいし、口を開かずにもぐもぐと話しているから、誰もあなたの声に気づかない。悲しいことですよ。」と青木が50代男さんの言葉をききのがさずに、すかさずフォロー。
「気づいたんですね。それでいいんですよ。あなたの声は小さいし、はっきりと言わないので誰もあなたが何を言っているのかわからないのです。」と僕も同じことを繰り返して言います。
お会計をすませて外にでます。
タクシーを拾うために大通りにでました。
スタッフは何も言わずにただ立っていました。
少したってから、50代男さんが タクシーを止めるために手を挙げます。
給料日後の金曜日の夕食時ですので、行き交うタクシーはほとんど人を乗せています。
それでも手を挙げ続けたところ、2台のタクシーが止まりました。
スタッフは車内でも黙ったままです。
「●▲%❓✖️」と行き先を言いましたが、運転手が「なんだって!!」と聞き返します。
「●▲%❓✖️」と2度目は5割増の声量で言ったので、運転者に伝わりました。
僕たちの住まいに着くまでの十数分間、50代男さんは度々ため息をつきました。
「ため息ついてはダメですよ。」
「自分で自分の気持ちを下げてはダメです。あなたは昨日より確実に成長してますでしょ。」とあまり日本語がうまくないスタッフが話します。
「成長していますか?」
「もちろん。」
「どこらへんが成長していますか。」
「レストランで会計をする。」
「タクシーを呼び止める。」
「今までなんどかチャレンジしたけれど、あまりうまくいかなかったんじゃないですか。」
「今回は運転者さんに、1度聞き直されたけれど、通じて私たちは家に帰れます。」
「こんなの当たり前のことでしょ。できて当たり前。」
「そうですよ。当たり前のことができなかったあなたが2つ出来るようになった。」
「毎日続けていけば、3年間であなたは社会にもどれるんですよ。」
「ほんとうに?」
「はい、ほんとうです。」
「社会に戻れるって。」
「僕は今ひきこもっていない。」
「僕はあの部屋にいるんじゃなくて、今外国に来て生活しているんだ。すごいことだよ。」
狭いタクシーの中で、50代男さんが独りごとを呟きます。
今日も一日が過ぎていきます。
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