一人で調べてフィリピンの空港に降り立った俺。
気持ちが高ぶっていた。
確か18歳くらいだったと思う。
今考えたら大したことはないのに、その時の自分にはとても大きなことをやりとげたという気持ちでいっぱいだった。
で、俺は気持ちが緩んでしまってミスをしてしまうんだ。
青木さんが言ったように空港を出たらたくさんの人が変な日本語で声をかけてきた。
その人たちを軽く乗り越えてタクシー乗り場にたどり着いたけれどめちゃくちゃな人数が待っている。
100人くらいだったかな。
しかもタクシー1台もこないし。
外は35度くらいだし。
荷物もめちゃ持たされているし。
限界だった。
「お兄ちゃん、違うタクシーレーンもあるからそこ案内するよ」
振り向いたらニコニコした女性が立っていた。
すぐに俺のセンサーが警告を発した。
無視をしていた。
でも諦めずに何度も話しかけてくる。
ラインは全然減らない。
フィリピンの暑さが俺の体力を奪っていく。
トイレにも行きたくなったが今行くと最後列になってしまう。
日本なら「ちょっと見ていてもらえますか」とでもいうんだろうが、前後はいかつい顔をした人だったので声をかけられなかった。
ダメだったらまた最後尾で待てばいいと自分に言い聞かせてその人たちについて行った。
ボランティア事務所の場所を言ったら考えていたタクシーの相場よりは少し高かっただけなのでスタッフになんか言われたら俺が差額を払えばそれで問題無しと思った。
受付の女性にお金を払って車に乗った。
とにかく疲れと暑さからゆっくりと座りたかった。
ところがタクシーなのに車体がタクシーらしくない。
車は俺を乗せたら慌ただしく発車した。
5分くらい走ったら突然運転手が俺に何かを見せた。
これは何ですかと聞いた。
なんか早口で英語を言ったので何もわからない。
でもお金を払えということらしいことはわかった。
さっき払った金額の領収書を見せたら、「あなた日本人ですか」と聞いてきたのでイエスと言ったら、「あなたさっきはタクシー代を払いました。」
「あなたは別に運転手にドライバー代をはらわなければいけない」ととても綺麗な日本語で怒った顔で言った。
そこで俺は気付いた。「騙された」って。
ドライバー代は信じられないほど高かったので、俺は車から飛び降りて空港に歩いて向かった。
もう少しで俺はその運転手をボコボコにしてしまうところだった。
さっきのタクシーの列に並び直していたら大変なことを思い出した。
日本からもってきた食料品や古着が入ったダンボールをさっきの車から降ろすのを忘れていたんだ。
大変なことをしてしまった。
さっきのおばさんをさがすけれどもうどこにも見当たらない。
どうしよう、大きな失敗をしてしまった。
日本食を楽しみに待っている日本人スタッフに合わせる顔がない。
やっぱり俺にはこんなことは無理なんだ。
バカな人間にはできないんだ。
俺ができることは暴れることぐらいだから。
死んだほうがいいんだ。
役になんか何もたちはしない。
生きていても意味がない人間だろ俺は。
そんな考えが次から次へと出てきた。
俺と母ちゃんが男に殴られたことも何度も思い出した。
死んでしまいたかった。
こんなことくらいもできないなんて。
青木さんも他のスタッフもがっかりするだろうな。
このまま日本に帰ってサポートセンターもやめてしまおうと考えた。
そんなことを考えていたら電話が鳴った。
ボランティアスタッフからだ。
電話に出たら日本人スタッフだった。
「どこにいるの?心配しているよ。」
その声を聞いたら話せなくなって電話を切った。
タクシー待ちの列から離れてどうしたらいいのかわからずベンチに腰掛けていた俺です。
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