学級委員になるには資格がいる。
勉強ができる ○(青木)
運動ができて目立つ ○
まじめ ◎
かっこいい △
トータルすると僕はクラスで5番手ぐらいだった。
とても学級委員になれる生徒ではなかった。
ホームルームの時間に学級委員を選ぶ為の話し合いが行われた。
僕には無縁の事だ。
まあ、図書委員ぐらいが順当だ。
クラスで一番目立つM君が手を挙げた。
「学級委員には青木君がいいと思います。」
「理由は、優しくて、ドッチボール大会ではクラスを優勝に導きました、一番の理由は僕と違って女子のスカートめくりを一度もしなかった男だからです。」
クラスの女子から歓声にも似た声が上がった。
「他に推薦する人はいないか」
川島先生が言った。
投票に入った。
確か満票で僕が学級委員に選ばれた。
6年生になって、通知表が殆ど4の中に5が3ぐらいだった。
確かにその事は僕に自信を与えた。
しかし、学級委員になる資格はない事ぐらい自分が一番知っている。
勉強ができても、人と関わることは依然として苦手だった。
人とうまく話せないのだ。
どちらかというと、皆といるより、一人でいろいろと空想している方が好きだった。
だから、学校が終わっても友達付き合いは殆どなかった。
スカートめくりにしても、本当は他の同級生のようにうまくやってみたかったが、どのようにしてやっていいのかがわからなかった。
さすがに、川島先生もそこまでは教えてくれなかった。
だから、女子は勝手に青木君はまじめな男だと勘違いしていた。
人並み以上に「スカートめくり」に興味があったのに。
ある日の出来事を忘れはしない。
午前中にTさんがスカートめくりの被害にあった。
Tさんはとても美しい女性だった。
しかも僕の目の前で、Tさんのスカートが舞い上がった。
給食後の時間、今度はHさんのスカートが舞い上がった。
今度も僕の目の前だった。
それから数週間、スカートめくりの場面がスローモーションで何度も僕の頭の中で再生されていた。
話が横道にそれてしまった。
今思うに、これは事前に川島先生とM君との間で僕を学級委員にするという密約があったに違いないと今は思っている。
そして、これが川島先生の思い描いた最後の支援プログラムだったのかもしれない。
確かに僕は学級委員になった事で、何事も今よりもっと頑張ろうと思えるまでになった。
その後生徒会長にまで立候補する事になる。
生徒会長になったのは、立候補演説会で、冗談をいって学校中の生徒を笑いに巻き込んだ生徒だった。
僕も冗談の必要性は知っていたが、僕の参謀が考えたギャグは
テレビ番組「8時だよ全員集合」で加藤茶がやっていたコントだった。
壇上で寝転がって「あんたも好きねえ〜」と言わされたのだ。
一瞬、校内が凍り付いたのを僕は感じた。
なんとかしなければと必死になってその雰囲気を打消す為に、何度も「あんたも好きねえ〜」をこれでもかとやり続けた。
僕の投票数は80台だった。
会長になったのは120点台だった。
かわいそうと思ってくれたのが80人もいたんだねと慰められた。
我に返った僕は、恥ずかしくって、次の日は熱を出したという事で欠席した。
小学校4年生までの僕とは全く違う人間になっていた。
もう誰も僕をいじめようなんて思わなくなったから。
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