貴重な一枚 行政職員撮影
「すみません、群衆が来ます。ここから逃げてください。」
台風被害にあった地域の行政の方が顔色を変えて、僕たちのいる部屋に飛び込んで来ました。
小さな音だったのが、もう近くにせまっているというまでに感じられるほどになっていました。
僕たちは慌てて、事務所から外に出て、行政職員に誘導されるまま走りました。
広場に出ると、既に群衆が暴徒化しておりました。
貴重品をおなかの前で大事に抱え込みながら、群衆の中を通り抜けました。
支援物資を積んであるトラックのところまで引き返すと、みんなその場にしゃがみ込んでしまいました。
「あっ」
大きな声を出したスタッフをその場に居合わせたみんながいっせいに見ました。
「青木さん、忘れてきた!!」
スタッフがすぐに行政職員に話しました。
あの場所には戻りたくないって、職員は顔を激しく横に振りました。
「はい、青木さんご臨終決定!!」
「支援の現場で命を落とせりゃあ、あの男に取っては、それが本望だ」
「ヒロさんは青木さんにお世話になったでしょ。いつもあなたのことを考えてくださった人でしょ」
「死んだような言い方はしてはいけない」
「やっぱり、だめだしか。まあいいさ、このフィリピンで死ぬんだから、そうだよあんたらが思う通り、俺は人間の屑なんだよ」
心の中でそう言いました。
青木さんはどうしているのか
スタッフの中には泣いている人もいました。
僕も一応泣く振りをしてみましたが、無理でした。
(続きます)
にほんブログ村に参加しています。
下記バーナーのクリックにご協力をお願いします。